Maserati VOR70 (マゼラーティのレーシング・ヨット) その3

久しぶりにMaserati-SoldiniのWEBをチェックしたら、今から9時間ほど前にMaserati VOR70はニューヨークを出航して、NY - 英国CAPE LIZARD間の2,925海里の帆走記録にチャレンジ中でした。冒頭の写真はオフィシャルWEBから借用したMaseratiがNYCに到着する姿です。
前の記事で書いた、マイアミ−ニューヨーク(Miami-NYC)間の947海里の帆走記録への挑戦は残念な結果に終わっていたので、今度こそは2003年にMari Cha IVが樹立した6日と17時間52分39秒のNYC-CAPA LIZARD間の単胴艇による記録を塗り替えて欲しいと思います。
下の写真のMari Cha IVはデッキ長140ft(42.7m)、全高が148ft(45m)で2本マストのスーパーヨットで、全長が70ft(21.5m)Maseratiの2倍以上の長さです。

因みにMari Cha IVの前の大西洋横断記録の歴史を見ていくと、フランスの80ftの単胴艇Nicoretteが1997年に樹立した11日と13時間22分の前の記録樹立は、なんと1905年に遡ります。時のドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世(!)が主催した大西洋横断帆走レースで優勝したのは、ニューヨーク州のShooters IslandのTownsend and Downey造船所で1903年に建造された3本マストのスクーナーAtlanticです。12日と4時間1分の単胴艇の帆走記録は、92年もの長い間破られることがありませんでした。Atlanticは全長227.7ft(69.4m)303トンの大型スクーナーだったそうです。帆走する見事な姿の写真が残っていますが、残念なことに晩年は燃料貯蓄船として使われ、最期は1982年にヴァージニア州ノーフォークでスクラップにされています。帆船模型の世界ではあまり有名ではないかもしれませんが、米国のBlue Jacket社製のキットが販売されています。

さて、Atlanticの記録樹立から107年後のMaseratiの挑戦はどんな結果になるのでしょうか。
ダウ船について(Dhow Ships) その1

長い期間、記事が停滞してしまっております。最近、仕事があまりにも忙しく週末が無い状態が続いています。
冒頭の写真は、最近ドバイに出張した際、ホテルのバルコニーから撮影したクリーク沿いに停泊するダウ船の姿です。
ダウ船(Dhow)というと、中東の伝統的な木造の交易船とのイメージだと思いますが、個人的にはあまり興味を持てる対象ではありませんでした。下の写真を見ても、美しさは感じられません。船上構造物のペイントもちょっと勘弁して、って感じです。

ダウ船は、アラビア半島、東アフリカを中心に使われている木造船で、従来は、木造帆船として、インド洋を渡る交易に使われ、現在は帆船ではなく動力化され沿岸交易船として未だに生き延びている、というのが一般的な説明ですが、文献を調べていて気になる言葉がありました。
「ダウ船は【縫合船】に分類され、竜骨と肋材を組み合わせて、材木同士を鉄釘で留める堅牢な構造とは基本的に異なり、舷側板をココヤシの繊維の紐で縛る構造」とのことですが、これは現代のダウ船には当て嵌らない解説だと思います。

上の写真は別の機会にこれもドバイのクリーク沿いに停泊するダウ船を撮影したものですが、火災を起こしたと思われるダウ船の残骸(といってもちゃんと浮いていますが)を見ると、構造的には通常の木造帆船と同じような感じがします。

ダウ船は帆船模型の世界でも、コーレル社のAl Bahranくらいしかキットが見当たりませんが、次からダウ船、但し、この記事の写真にある達磨運搬船ではなく、飽くまでブログの趣旨に基づきダウ帆船に限定していくつか記事を書いてみたいと思います。
Maserati VOR70 (マゼラーティのレーシング・ヨット) その2

冒頭の写真は、Soldini-Maseratiの公式サイトから借用したマイアミを出航するMaseratiの姿です。
ちょっと公式サイトのチェックを怠っていたら、Maseratiは、マイアミ−ニューヨーク(Miami-NYC)間の947海里の帆走時間記録を樹立すべく、3月22日にマイアミ港を出航して北上中でした。単胴艇の24時間帆走記録(596.6海里)への挑戦は延期して、先ずはMIAMI-NYC間の記録に挑戦しているみたいです。
現時点で出航から約44時間が経過し、543海里を走破しています。NYC到着まで残り404海里です。これだけを見ると、同じVOR 70の船体を持つエリクソン4が保持する24時間の帆走距離記録(596.6海里)は凄いですね。
Maseratiが帆走する動画を閲覧することが出来ます。ヘリコプターから空撮したと思われる見事な姿です。
このサイトでは、マイアミを出航後の航路、帆走速度がリアルタイムに見ることができ大変に興味深いです。航路を辿ると帆走速度が表示されますが、最高で22.2ノットを記録しているのが判ります。その後、北緯31度44分68秒、西経78度44分97秒あたりで、帆走速度が5.6ノットに落ち、現在は11.0ノットで航海中です。
昨日の午後、「風が急速に落ちてきた」と、Captain Giovanni Soldiniがツイッターで呟いているのもWEBで確認できます。世界のどこからでもMaseratiの帆走状態をリアルタイムにモニターできるのは凄いことですね。
帆走予定航路を見ると、風速が10ノット以下になるところもあり、航海ルート判断が難しそうですが、素晴らしい記録を樹立出来るといいですね。今回、Maseratiは、単胴艇(Monohull)のカテゴリーの記録樹立を狙っていますが、このカテゴリーには現在リファレンスがありませんので、仮に完走すれば、このMaseratiのタイムに今後挑戦することになります。

オーブリー・シリーズとかの海洋小説でよく、「全ては風まかせ」とのセリフが良く出てきますが、記録樹立には帆走技術、帆船の性能も最高であることが必要ですが、運に拠るところも多いような気がします。
Maseratiの安全な航海をお祈りします。
Maserati VOR70 (マゼラーティのレーシング・ヨット) その1

長らく車の趣味から遠ざかっていますが、偶々Maseratiのホーム・ページを見ていたら、冒頭のヨットの写真が掲載されていました。
なんとマゼラーティのレーシング・ヨットです。その名もMaserati(日本語ではマセラッティと表記されますが、ここではイタリア的にマゼラーティと書きます)。単胴艇で最速といわれるVolvo Ocean Raceの仕様に基づく帆船です。全長が70ft(21.5m)、全幅が18.7ft(5.7m)、全高が103.3ft(31.5m)と途轍もなくマストが高いのが特徴です。それにしてもとんでもなく派手な船体のペイントとセイル・デザインですが、流石にイタリアの名門マゼラーティ、見事なセンスです。写真は、公式WEBの壁紙ダウンロードから引用させて頂きました。

この帆船は、つい先月、スペインのカディス(CADIZ)からバハマのサン・サルバドル(San Salvador) の区間(3,884海里)を10日と23時間9分2秒で帆走し、単胴艇の最速帆走記録を樹立したのでした。この区間は、1492年8月3日にコロンブスが、サンタ・マリア号、ニーニャ号、ピンタ号の3隻の船団でパロス・デ・ラ・フロンテーラ (Palos de la Frontera)を出航し、カナリア諸島経由でサン・サンバドルに10月12日に到着した有名な航海とほぼ同じルートです。コロンブスの航海期間は実質5週間程度だったそうです。
ところで、Maserati号は、この区間を平均速度は17.6ノットで実際には4,632マイル帆走したそうです。この航海の様子は公式WEBに詳しく記載されていますのでご覧下さい。
このヨットには、ジョバンニ・ソルディーニ(Giovanni Soldini)が率いる8名のクルーが乗り込んでいますが、Maserati号は次の記録樹立を目指して、現在、米国サウス・カロライナ州のチャールストン (Charleston)で風待ち(?)の状態です。Maserati号の次の挑戦は、単胴艇の24時間帆走記録の樹立です。現在の24時間帆走記録(A Day's Run)保持艇は、同じVOR 70船体のエリクソン4が2008年10月に樹立した596.6海里です。公式WEBで実況されるみたいですので楽しみにしています。実は、Maserati号はチャールストンを3月7日に出航して、ノースカロライナ州のCape Hatterasに向かい、3月9日〜10日頃から記録に挑戦する予定だったのですが、流木により舵(ラダー)を損傷してしまい、チャールストンに戻って修理をしたのでした。 下は船体の図面ですが、如何にも速そうですね。

歴史を紐解くと、アメリカの造船家Donald McKayの傑作であるクリッパー帆船チャンピオン・オブ・ザ・シー(Champion of the Seas)がAlexander Newlands船長の指揮下、英リバプール-豪メルボルン間の処女航海で1854年12月11日に樹立した24時間で465海里を帆走した記録が有名ですね。この記録はなんと1984年まで130年も破られなかったのでした。ブラック・ボール・ラインのChampion of the Seasは、全長252ft(76.8m)、全幅45.6ft(13.9m)、2,447トンで1854年にボストンで進水しており、下の写真が残っています。クリッパー型帆船が満帆で疾走する姿はレーシング・ヨットとは比較できない迫力だと思います。

トライデント・マークを見ると、在りし日の愛車を思い出します。たしか18年程前に最初のMaseratiを購入して、その後、何度かイタリアのモデナ(Modena)のMaserati本社に足を運んだのでした。この話は、別の機会に。。
帆船関係の書籍(Howard I Chapelle編)

記事の更新がまたもや著しく停滞してしまいました。
ますます仕事が忙しくなり帆船模型と向かい合う時間も殆どありませんが、ささやかな楽しみは、就寝前の短い時間に少しづつ読み進めるHoward I Chapelleの名著の数々です。
以前の記事で紹介した、The American Fishing Schooners: 1825-1935を皮切りに、新品で手に入るHoward I Chapelleの著書を7冊揃えてみました。The History of the American Sailing NavyとThe History of Americal Sailing Shipsの2冊は専門店からの取り寄せで新品とはいえ、再版されたのが1980年代なので幾分黄ばんでいましたが、まずまずの程度の本を手に入れることが出来ました。
The History of American Sailing Shipの初版は1935年でアメリカ独立前の18世紀から20世紀初頭の木造スクーナーに至るまで、豊富な図面とともに米国での帆船の発展が丁寧に解説されており、本文は350頁程の分量です。
The Americal Sailing Navyの初版は1949年で、更にアメリカ海軍の艦船に絞った力作で補記(Appendix)を加えると550頁に及ぶ大作です。図面も豊富で頁を捲っているだけでも幸せな気分になれます。
Howard Irving Chapelle(1901-1975)は、造船技師としてのキャリアを積み、1930年代には自らの造船所をメリーランド州のChambridgeの近くに持っていたそうです。そして第二次世界大戦中は、米国海軍の造船技師として活躍、大戦後は、英国、トルコでの研究も行い、1957年から国立アメリカ歴史博物館(The National Museum of American History)の学芸員(curator)となり1971年に引退するまで、米国の帆船の造船技術と歴史を中心とした研究を続けられました。Howard I Chapelleの著書は、アメリカの帆船の歴史を研究する上での古典ですね。
それでは、Howard I Chapelle以後のアメリカの帆船の研究はどうなっているのでしょうか。
アメリカの帆走海軍(Sailing Navy)を主題とした次の新刊(2001年出版、なんと21世紀の著書!)もお勧めです。
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アメリカの帆走軍艦というと、どうしてもUSSコンスティテューション(USS Constitutionに代表される重量級フリゲート艦を想像しますが、この本には米国海軍の戦列艦も詳しく解説されており、1820年に進水したUSS Ohio(74門艦、なんと就役は1838年だそうですが)、1814年に進水して1815年に就役したUSS Independence(74門艦)とかはなんと晩年の写真も掲載されています。これ以外にも、今まで見たこともないような貴重な写真が幾つか添えられているのが特徴です。
帆船の本は、出版される数も限られているので、なにか面白そうな本を見つける度に買ってしまうので、どんどん増えていきます。しかし、帆船模型の作製はなかなか進みません。



